睡眠は、私たちにとって欠かすことのできないものです。ところが、ここ数年、眠りに関する悩みをお持ちの方や睡眠に関する病気(睡眠時無呼吸症候群など)を患っている方がとても増えています。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、成人の20人に1人は眠剤を服用しているといいます。
2020年にヘルスケア製品・医療関連機器を中心とする電気機器関連機器メーカーであるフィリップスが、13ヵ国を対象に実施した世界睡眠調査で、日本は「満足している」と答えた人は32%と13ヵ国中最下位という結果でした。
これらのことからも判るように睡眠に関する悩みが増えています。その背景には、ストレスの増加があると考えられます。
睡眠は時間だけでなく、それ以上に質の高さが重要になってきます。あなたの睡眠は大丈夫ですか?
疲れが取れにくい、やる気が出ない、体調がイマイチ、そんな時は睡眠を見直してみる必要があります。睡眠は心と身体の健康を維持するための重要な要素です。
◆睡眠がもたらす効果◆
①疲労回復
睡眠をとることで内分泌機能の向上・新陳代謝の促進・ストレスが緩和されます。
②生活習慣病の予防
寝不足は生活習慣病(ガン・心疾患・脳疾患)の発症リスクを高めます。
③ストレス・うつ病の緩和
睡眠には脳を休ませ自律神経を整える働きがあろり、ぐっすり眠ることで脳内の分泌物質を正常に戻し、ストレスやうつ症状を緩和・軽減します。
④美容促進
肌のターンオーバーを促進するのは睡眠時に発生する成長ホルモンです。深い眠りに入ると分泌が始まり美肌効果が期待されます。
⑤肥満予防
睡眠は食欲をコントロールするホルモンと密接な関係にあるため、十分な睡眠太りにくい体質をつくります。
⑥免疫機能とのかかわり
質の良い睡眠をとることで、風邪などがひくにくくなります。
睡眠はこのような様々な効果を私たちにもたらしてくれます。では、質の良い睡眠を効果的にとるためにどうしたらよいのでしょうか?
まず、質の良い睡眠とは、①スムーズに入眠できること、②深く眠れたと実感すること、③スッキリと目覚めることの3つがポイントです。
つまり、脳も身体も充分に休めている睡眠を指します。こういった質の良い睡眠をとるために効果的なことはいろいろありますが、まず、次の3つを意識してみてください。
1. 体内時計の乱れを整える
私たちの身体は、1日のリズムを刻む体内時計が備わっています。
この体内時計により意識しなくても “日中は活動的に” “夜は休息状態に” 切り替わり、眠りたくなってきます。
体内時計は光を浴びることでリセットされるようになっているので、朝、起床後には意識的に日光を浴びるようにすると、自然と目が覚め活動状態になっていきます。ここで知っておきたいのは、この体内時計を調節するメラトニン(睡眠ホルモン)の存在です。メラトニンは眠りを導くホルモンです。
光を浴びると分泌が止まり、目覚めてから14~16時間くらい経過するとにまた分泌されます。メラトニンの分泌は光によって調節されるので、部屋の照明が明るすぎるとメラトニンの分泌が抑えられ、体内時計の働きが乱れてしまい寝つきが悪くなったり、睡眠の質を下げる原因になります。また、パソコンやスマホから出ているブルーライトは太陽の光に似ているため、脳が日中であると勘違いしてメラトニンの分泌が抑制されるので寝る前には控えたほうが良いです。
※メラトニンは、加齢とともに分泌量が減少するため、朝早く目覚めたり、夜中に何度も目が覚めたり、睡眠時間が減ってくるのは、体内時計の調節機能が弱まっているためと言われています。
2. 入浴で体を温める
体温と睡眠は深い関係にあり、身体の熱を逃がすことで眠気が訪れるという仕組みがあります。皮膚表面から熱を逃がすシステム(熱放散)が働くと、深部体温(身体の内部の温度)が下がり、それに伴って身体は休息状態になり眠気が訪れます。
冷え性の人は熱放散がされにくいため寝つきが悪かったりします。そこで、就寝1~2時間前に入浴をして身体を温めましょう。お湯の温度は38〜40℃がおすすめです。ゆっくり浸かって身体を温めてください。
ぬるめのお湯は副交感神経を優位にし、心身がリラックスして眠りにつきやすくなります。
身体が温まり末梢血管が広がると手足からの熱放散がスムーズになり、深部体温を下げやすくし、質のよい睡眠がとりやすくなります。
逆に42℃以上の熱い湯に浸かると、交感神経が優位となり眠りにつきにくくなってしまうので注意してください。
3. アロマでぐっすり安眠
なかなか眠れないときに「香り」を取り入れることはとても効果的です。
「香り」の中でも、植物の香りが心身にさまざまな効果をもたらす「アロマテラピー」は、睡眠力向上に大きな影響を与えるとされています。
リラックスや心身のバランスを整える効果や、不安や緊張がほぐれて寝つきが良くなったり、睡眠の質が向上したりと安眠のための大きなサポートとなります。
嗅覚は、五感の中でも原始的な感覚器とされていて、香りは脳内の本能的な情動や記憶を支配する部分(大脳辺縁系)にダイレクトに一瞬で伝わり、神経のスイッチを切り替えやすいという特徴があります。さらに、香りの情報は脳の視床下部に伝わり、自律神経・ホルモン系・免疫系に影響を与え、心身のバランスを整えてくれます。
アロマテラピーは、植物の香り成分である「精油」を使った自然療法です。
香りを嗅ぐことで様々な効果や恩恵を得られます。香りといっても多彩な種類があり、それぞれが異なった効果をもたらします。その中でもラベンダーの香りは脳のα波を円滑に促進することが知られています。
α波は脳波の1つで、心身ともにリラックスした状態のときに発するといわれています。
また、副交感神経が優位になる働きもあるため、睡眠へのスイッチをオンにするのに役立ちます。
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