ロコモティブシンドローム (ロコモ)は「運動器症候群」とも呼ばれる、2007年に日本整形外科学会により提唱された概念です。筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、立ったり歩いたりといったことが、困難になっている状態をいいます。入院して治療が必要となる運動器障害は、50歳以降に多発しているのが現状です。中でも、関節の痛みを訴える方が多くいます。
関節の痛みが起こる原因は、スポーツなどで靭帯や半月板などを傷めたときや、関節リウマチ、感染性関節炎、痛風発作、インフルエンザなどの病気によるものなどいろいろありますが、日本人に最も多いのは変形性関節症です。
加齢とともに、骨と骨との間のクッションの役割をする軟骨がすり減って痛みが発生します。その発生率は年齢と共に増加し、50歳以上の女性で約75%、男性で約54%と、およそ3,000万人の日本人が変形性関節症を患っていると推定されています。
変形性関節症に最もなりやすい部位が膝です。
具体的にどういった経緯で変形関節症になるかというと、
① 膝を酷使すると、膝のまわりの腱や筋が張って、歩き始めに痛みを感じるようになる。
② 膝に負担をかけ続けると、膝への衝撃を吸収する関節軟骨や半月板が徐々に変性しはじめ、炎症が起こり、腫れて熱を持ったり、膝に水がたまったりする。
③ 炎症が慢性的になると関節包が硬くなって十分に機能しなくなり、膝の曲げ伸ばしがしにくくなる。
④ 関節軟骨がすり減りだしなくなってくると、立ち上がったり、階段の上り下りなどの際に骨同士がぶつかって、痛みが起こるようになる。
これが変形関節症が起きる流れです。特に、肥満によって膝に負荷をかけている人や、激しいスポーツで膝を酷使している人などは、発症が早まる傾向があります。また、加齢と共に関節軟骨の柔軟性が失われてきますので、注意が必要です。
一度痛みが出てしまうとその種類にかかわらず、痛みそれ自体が悪循環を起こしてしまうことがあります。まず、痛みが発生するとその痛みをかばうために姿勢がくずれます。それによって、他の部位に負担がかかり痛みが違う部位に表れます。
痛みが広がることや、痛いのは嫌だといことからで身体を動かすことが少なくなり、結果筋力がどんどん低下し、いざ動かそうすると以前よりももっと痛くなるといった痛みの悪循環にはまっていきます。
痛みの悪循環を止めるためには、筋力をしっかり高めていくことが重要です。運動習慣を身に着け、筋肉を鍛えることは、中高年の生活の質を高めることにつながります。
いかに食事や運動に気をつけて、筋肉を維持していくのかが、若々しく、健康的に過ごせるかの鍵となります。
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